いのうえ歌舞伎第5弾で、アンチ・ヒーローに染五郎が挑む――。『朧の森に棲む鬼』

INFORMATION

[公演日・会場]
2006年12月29日(金)、30日(土) <プレビュー公演>
2006年12月31日(日) <カウントダウン公演>
2007年1月2日(火)〜27日(土) <新橋演舞場1月公演>
新橋演舞場

[発売日程]:プレオーダー、:一般発売
10/2〜10/15  10/29

※イープラス一般受付の他にも、お弁当付き一等桟敷席をご用意しております。 この機会をどうぞお見逃しなく!!


ゲキシネ [上映日・会場](7/18現在)
2007年10月6日(土)より 全国16スクリーン一斉公開!
T・ジョイ新潟万代/新宿バルト9/T・ジョイ大泉/シネマイクスピアリ/エクスワイジー・シネマズ蘇我/ ミッドランドスクエアシネマ/MOVIX京都/梅田ブルク7/なんばパークスシネマ/広島バルト11/ T・ジョイ東広島/T・ジョイ リバーウォーク北九州/T・ジョイ久留米/T・ジョイパークプレイス大分/ 鹿児島ミッテ10/札幌シネマフロンティア/ユナイテッド・シネマキャナルシティ13/川崎チネチッタ/109シネマズHAT神戸

[発売日程]:プレオーダー、:一般発売
7/21(土)〜

公演詳細・チケットお申し込み
2007年最高の舞台が、圧倒的なスケールでついに映像化!
初の映画興行スタイルで10/6より全国一斉公開!

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いのうえひでのりさんから動画メッセージが届きました。

 

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市川染五郎さんから動画メッセージが届きました。

 

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e+special interview いのうえひでのり

 

 初めてその舞台を観たとき「これこそ現代の歌舞伎!」と思ったという、市川染五郎と劇団☆新感線との幸せな出会い。これをきっかけに2000年にスタートした、染五郎と新感線とのコラボレーション“新感染(シンカンゾメ)”も、今回の『朧の森に棲む鬼』で早くも第5弾となる。

  書き下ろし新作としては2002年『アテルイ』に続く2作目にあたる今回の舞台には、いくつもの新たな挑戦がある。新感線としては、これまでのいのうえ歌舞伎をさらに進化させ、人間関係を深くじっくりと描く大人の芝居を目指すという。そして染五郎としては、これまでの“新感染”で演じてきたヒーロー然とした主人公像からは一転、徹底した悪役に挑むことになったのだ。

  新たな可能性、魅力の発見ともなりそうな今回の舞台への意気込みを、演出のいのうえひでのりと、市川染五郎に語ってもらった。

ドラマ性を特に重視し、かつド派手なスペクタクルもある“オトナな”いのうえ歌舞伎をお見せします!

――このタイミングで、しかもこういう作品で染五郎さんと再び組むということは、だいぶ前から決まっていたんですか?

 そうですね。『髑髏城の七人 アオドクロ(2004年)』が終わったとき、次に染ちゃんとやるなら、悪役でやってもらいたいなという想いがあって。2000年の『阿修羅城の瞳』に始まり、今まで4作品にわたってやってきた、いわゆるヒーローみたいな役回りのものは『アオドクロ』ですべてやり尽くした感があったんですよ。それと同時に、いわゆる魑魅魍魎や陰陽師や鬼が出てくる、そういうSFチックで伝奇的ないのうえ歌舞伎というものは、もうそろそろいいかなという気持ちもあってね。というのも、僕らがこの路線を始めたころは誰もやっていなかったけど、今はなんだか似たようなものをいろんなところでやっているってのもあるし。この路線はこれでもういいかな、って思うようになったんですよ。

――では、今回、染五郎さんに悪役をやってもらうにあたって、物語としてはどういう話にしようと?

 シェイクスピアの『リチャード三世』的な、というのもあるけど、それと手塚治虫の『どろろ』に出てくる父親みたいなキャラクターもいいなっていうのは、ずっと前から思っていたんですよ。自分が天下を取るために、48匹の魔物に自分の子供の体を生贄に差し出すという、あの悪さにゾクゾクしちゃって。

――登場人物のなかで、悪人は染五郎さんが演じる主人公だけなんですか?

 いや、みんな、ひとクセもふたクセもある人間ばかりです。いわゆるわかりやすいヒーローものではないので。みんながお互いにだましだまされる。

――今後、いのうえ歌舞伎では人間ドラマのドロドロした部分をじっくり描きたいとのことでしたが、だからこそ今回は、そういうひとクセある人物が多いということですか。

 そういうことです。今回、鬼は出ないとか言いつつ、タイトルにはついているんですけど(笑)。でもこの鬼は、今までの鬼とは意味が違う。前は具体的に妖怪、魔物としての鬼だったんだけど、今回のは人間の心の闇のメタファーとして出てくるものなので。

――ホンモノの鬼は出てこない?

 表現としては、舞台なのでたぶん出しますけどね(笑)。まぁ、それは『マクベス』の“魔女”みたいな存在に近い。つまり、今までの鬼とは意味が違います。

――その違いが、今までのいのうえ歌舞伎とは違った“オトナな部分”でもある。

 そうですね。だから立ち回りも歌も、まったくないわけではないんだけど、今までみたいにそれが見せ場として前面に出てくるわけではないです。つまり、見せ場至上主義な芝居ではないということ。あくまでも、人間ドラマのほうを優先させたいから。

――スペクタクルではなく、ドラマ部分が重要になってくる。

 まぁ、そうは言っても新感線なので(笑)。ド派手なところ、スペクタクル性はあるんだけれども。そういう意味ではメリハリの効いた、オトナな芝居をお見せしますよ。


年明け早々、哀しい話だし血みどろにはなるけど……そこは新感線なので! 晴れがましく正月を迎えられると思います

 

――いのうえさんの演出プランとして、今回ならではのことというとどんなことですか。

 ヒントは“水”! それ以上はネタバレするともったいないから、ヒミツにしておこうかな(笑)。

――今回、染五郎さんに期待する部分は?

 まず、膨大にしゃべらせます! 今までやってきたいのうえ歌舞伎の比じゃないくらいのセリフ量だから。

――そんなにしゃべるんですか!

 口が達者で、ウソつきっぱなしの役だから。つまり、今までの作品で染ちゃんに求めてきたスキルとは全然違う。今までは美しさとか、身体能力の高さを要求していて、それはすごくできるというのはわかったので。今回はまたもうひとつ違うところに挑戦してもらおうということなんですよ。

――染五郎さんの、また違う面を見たい、と。

 そう。この役を乗り越えたら、さらにひとまわりでかい市川染五郎になれるんじゃないかと思う。目指せ松本幸四郎、打倒松本幸四郎、ということで(笑)。でも本当に、これを通過すると芝居の幅はワンランク上にいけると思うな。とにかく、相当やりがいのある役だと思いますよ!

――そして今回は新感線初の“カウントダウン”イベントもありますね!

 なにが起こるかはヒミツということにしておいてください(笑)。未定ですが、一応、僕が出している希望としてはみんなにお蕎麦を食べていただきたいんだけど……なにかイベント性の高いもの、思い出に残るものにしたいな。

――では最後に、お客様にここを観てほしい! という部分はズバリどこでしょう。

 物語はすごく哀しいというか、人間のどうしようもなさが出てくるのでツライ話ではあるんですけど。でも、そこは新感線なので。結果的には、お祭りにはなると思います。晴れがましく正月は迎えられると思う。

――お正月早々、悪役の話ではあるけれど(笑)。

 そう、年明け早々、血みどろな話ではあるんだけれど(笑)。スカッと……するかなぁ。まぁ、ともかく見ごたえはあると思いますよ! 哀しい話だけど、先に希望のある、きれいな絵にしたいなと思っています。そして、「お? 新感線もちょっと変わってきたね」と言わせたいですね。


いのうえひでのりprofile

 1980年に劇団☆新感線を旗揚げ。奇抜なアイデアとハードロック魂で独自の世界を構築し、新しいエンタテインメントとして小劇場という枠を超えて活躍。俳優の資質を最大限引き出す演出家としてのその手腕は、各業界から注目を集めている。最近では、『吉原御免状』(隆慶一郎原作)や、天草四郎の史実をモチーフにした本格ロック・ミュージカル『SHIROH』など、新しいスタイルの舞台を次々と打ち出している。



e+special interview 市川染五郎

今回は口先、舌先でみんなを翻弄しだましていくという、徹底した悪役。
歌舞伎でいう“悪の華”、悪の色気を出したいと思っています

――2004年の 『髑髏城の七人 アオドクロ』 に出たことで、染五郎さんのなかでは、新感線とのコラボレーションについてはひと区切りついた気分だったそうですが。

 そうですね、僕はもうあの作品ですべてやりきったという想いがありました。実際、あれが最後かなとも思っていたのも確か。というのも、最初、一緒にやりたいと思っていた新感線に対する気持ちは、すべて出し切ったから。だからもし次にまたチャンスがあるんであれば、なにか違う目的を持ってやらないと、と思っていたんですよ。

――では、今回の舞台の話がきたときに、一番魅力を感じた部分はどこでしたか?

 作品に対しては、すべておまかせなので特に僕のほうからはないんですが。それよりも、いのうえさん的に『アオドクロ』以降はいのうえ歌舞伎をちょっとシフトチェンジするというようなことをおっしゃっていたので。それならば、やる目的ができたなと。

――また違うものが発見できるかも、と。

 ええ。そこに一番魅力を感じましたね。

 

――台本を読んでみた感想としては、いかがでしたか。

 すごく、人間臭いというか。これまでの『阿修羅城の瞳』も『アテルイ』も『髑髏城〜』も、主人公は完全無欠ではないもののヒーローみたいな立場だったじゃないですか。それが、今回は完全に悪役。思いっきり、悪に染まっている人間なので。

――そこまで徹底した悪役を演じるにあたって難しそうなところ、逆に面白そうなところは?

 やっぱりいのうえさんの世界ですからね。ビジュアル的には常にキメておきたいし、もちろん、悪の色気はないといけない気がするんです。ものすごく悪いヤツって思われたいですが、それと同時に色気がないと、いのうえ歌舞伎は成立しない。歌舞伎にも“悪の華”というのがありますけど、それがうまく出せればいいなと思っています。

――セリフの量が、とにかく膨大だとか?

 そうなんです。口先、舌先でみんなを翻弄し、だましていく役ですから。

――いのうえさんは、この役を染五郎さんが演じきったら、またワンランク上がるだろうとおっしゃっていました。

 いや、僕としては全部、みなさんにおんぶに抱っこでやるだけです!

――「打倒幸四郎!」とも(笑)。

 あ、それはある意味、もうすでに打倒していますから(笑)。では、さらに踏みにじるくらいの勢いでやりましょう!

――歌舞伎に出られるときと違う、新感線の舞台ならではの楽しみ、心構えというと。

 僕の場合は「歌舞伎役者だから」というのがありますからね。つまり歌舞伎役者を名乗っているものが、いのうえ歌舞伎に出て効果がなければ、歌舞伎役者である意味がないと思っているんです。常に、そういうプレッシャーは感じています。

――その効果というのは、具体的には?

 それもやはりビジュアルですね。
歌舞伎ならではのひとつひとつの決まり事や、音楽的なセリフまわしというものが、いのうえ歌舞伎には必要とされると思うので。たとえば見得ひとつ切るにしても、いのうえ歌舞伎でもカッコイイと思われないといけない。そうじゃないと、見得というものは歌舞伎のなかだけならカッコイイことなんだねってことで終わっちゃう。いのうえ歌舞伎で見得を切っても、やはりカッコイイっていうふうに思われることによって、歌舞伎のすごさ、懐の深さ、どんなジャンルにでも使える演技術を持っている歌舞伎の評価にもなるわけですから。そういうものを背負ってやっている感じはありますね。

 

新感線の舞台に出るときには心身ともに孤独になります。自分との戦いで、どれだけ自分を痛めつけられるかだけの話ですからね!

――染五郎さんが感じる、新感線、いのうえ演出の魅力とは?

 当然なんですけど“こだわり”ですかね。自分たちがこだわっているものに妥協しないカッコよさは感じます。よく、ギャグとか歌とか爆音とか立ち回りが多いって言われますけど、それはもう、そういう脚本だから仕方がないんですよ。そこに、必然性があるんですから。単なるチャンバラショーですみたいなものは、ひとつもない。どうせやるならとびきりスゴイのをやろうぜってだけの話なんですよね。

――逆に、新感線に出て苦労するところというと?

 そうやって作り上げたひとつの形を維持するということは、やはり大変です。そして心身ともに孤独になりますね、新感線の芝居は。自分との戦いで、どれだけがんばれるか、自分を痛めつけられるか。だから僕の場合は、お客さんが喜んでくださるから気持ちいいとか、役者さんたちと和気あいあいで楽しいっていうものは新感線の舞台のときには、まったくないんです。感じてみたいとは思いますけど。

――そうなんですか!? これまで稽古中にそういう和気あいあい的なことを感じたことはまったくない?

 ええ、ないですね。それくらい、これができなきゃここには入れないよみたいな空気が、新感線に出る場合にはあります。

――ハタから見ていると、とても楽しそうな稽古場なんですけどね。

 確かに楽しいときもあるし、刺激にはなりますけど、でも求められたものができない限りはそこには入れないし、一緒に笑う権利がないと思うんです。

――では今回の公演に関して、染五郎さんの中で、課題、テーマ、目標みたいなものはありますか。

 この、いのうえ歌舞伎が、演劇としてそろそろいい加減認められたいですね。

――いい加減認められたいというのは? まだ認められていないと?

 だってまだ、いのうえひでのりという演出家は無冠ですからね。これは、演劇として極めて不健康なことだと思うんです。賞を獲る、獲らないはどうでもいいんですけど、ただ、ジャンルとして認められたいと思いますね。
特に、こういう芝居が最近は増えましたから。

――そのさきがけなのに?

 さきがけ、というより、これが唯一のホンモノですから! 
決してB級でない、A級の演劇ですよ。
そういう意味では、松竹が演舞場の正月公演にこれをうってくれるというのは、唯一認めてくれるところだったってことですよ。演舞場の正月公演というのは、やはり特別なものだと思うので。それは、本当にうれしいです。

――今回は、正月公演の前にカウントダウンもあるということで。

 僕も実は、そんなことはできるわけがないと思っていたんです(笑)。やれたらおもしろいでしょうとは思いましたけど。元旦スタートっていう劇場はほかにもある、それならカウントダウンをやったほうが盛り上がるし、派手なんじゃないかと。

――染五郎さんも実は、やってみたかった?

 いや、やりたい気持ちは半々ですね。だって大晦日には大掃除があるし、元旦には挨拶回りもあるので(笑)。たぶん、関係者の家族側には不評だと思いますよ。でも、役者というものはそういう商売ですからね!

――では最後に、お客様にお誘いのメッセージをいただけますか。

 もう本当に、ただただ憂さ晴らしに来て、ストレス発散していただけたらと思いますね。もちろん作品的にはテーマがあったりしますけど、しょせん娯楽。特にそこが、いのうえ歌舞伎の真髄だと思うので、今回もその点はブレずにやりたいと思っています!


市川染五郎profile

1979 年、歌舞伎座『侠客春雨傘』で初舞台を踏む。 1981 年、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』七段目の大星力弥で七代目市川染五郎を襲名する。その後、史上最年少の 14 歳で『ハムレット』主演以来、『アマデウス』、『バイマイセルフ』など、歌舞伎以外の舞台にも意欲的に挑戦。 1996 年から主催している『市川染五郎の會』や三谷幸喜作・演出のパルコ歌舞伎『決闘!高田馬場』、また舞踊の松本流家元・松本錦升として『魑魅魍魎的』のプロデュースや『阿修羅城の瞳』『蝉しぐれ』と続いた主演映画やドラマ出演など、多方面で活躍している。



あらすじ

 野良犬のようにギラギラとした目の男が、シャレコウベを踏みつけ歩いていく。そこは累々たる屍に埋まる深い森。「王の座を欲しくないか、おまえの命と引き替えに」突然現れた森の魔物《オボロ》の声が、その男の運命を変えた。
  ……「おもしれえ」。男の武器は、魔物にもらった「オボロの剣」。そしてありとあらゆる嘘を生み出す、赤い舌。放たれる無数の言葉は果たして正か邪か、善か悪か。そして告げる想いは、愛か、それとも憎しみか。嘘で染まった真っ赤な舌が、裏切りと憎悪の無間地獄を作り出し、そして「オボロの剣」が、緑の森に赤い血を降らしていく――。
  『血よ。オボロの森を真っ赤な嘘に染め上げろ! それが俺の、生きる証だ――。』


主な配役

 ライ: 市川染五郎

 キンタ: 阿部サダヲ

 ツナ: 秋山菜津子

 シュテン: 真木よう子

 シキブ: 高田聖子

 ウラベ: 粟根まこと

 サダミツ: 小須田康人

 イチノオオキミ: 田山涼成

 マダレ: 古田新太


 取材・文/田中里津子

 写真/渡辺マコト(いのうえひでのり)、中村光明(市川染五郎)