妻夫木聡、広末涼子ら新キャスト陣で10年ぶりに待望の上演が決定!           野田秀樹インタビュー&動画コメント掲載!NODA・MAP第13回公演『キ ル』

INFORMATION

[東京公演日]
2007年12月7日(金)〜2008年1月31日(木)
Bunkamuraシアターコクーン

[発売日程] :プレオーダー、:一般発売
10/10(水)〜10/14(日)
10/22(月)〜10/23(火)<2次プレオーダー>   10/28(日)

   
野田秀樹

野田秀樹さんさんから動画メッセージが届きました。

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e+ special interview 野田秀樹

 常に演劇界の第一線で刺激的な舞台を創り続けている野田秀樹。彼の代表作のひとつでもあり、NODA・MAPの記念すべき第一回公演で上演された『キル』が97年の再演以来10年ぶりに甦ることになった。
 モンゴルの英雄・ジンギスカン(テムジン)の戦いの史実をファッション業界の攻防に見立てて、物語は展開する。野田ならではの言葉遊びは、この作品でも満載。タイトルからして、"キル"は"着る"であり、"切る"、そして"KILL"、さらには"生きる"にまでつながっていく。
 今回は初演、再演からキャストを一新。妻夫木聡、広末涼子を始め、野田とは初顔合わせの者、久しぶりの参加となる者が多く、非常に新鮮な座組となったことにも注目が集まっている。
 新しい『キル』の行方を、野田に聞いた。

 

妻夫木、広末という新キャストが新鮮に映るか、大丈夫かぁ? って思われるか……? そこも、楽しみのひとつです(笑)

――『キル』は1994年の初演、1997年の再演以来、10年ぶりの上演となります。このタイミングで3回目の上演というのは、なにかきっかけがあったんですか。

 『キル』は、またやりたいなっていう気持ちはずっとあったんですけどね。今年は10年ぶりということなので、それならちょうどいいやっていうのもありました。

――今回は、野田さん以外はキャストを全員変えるそうで。

 そうです。僕も変わればいいんだけどね。ま、スイマセンねって感じです(笑)。

――変わられても困ります(笑)。今回のキャスティングのポイントとしては。

 どうでしょうかね。妻夫木、広末のふたりが新鮮に映るか、大丈夫かぁ? って思われちゃうのか(笑)。そこも、楽しみのひとつですよね。『キル』は初演、再演の主演が堤真一で、彼のイメージが非常に強いから、それをどういう風に変えるか。でも10年も前の公演なわけだから、それを観ている人もどのくらいいるんだろうって気もするけど。妻夫木くんで、新しいテムジンを作りたいってところです。

――特に変える部分はありそうですか。

 作品的には、装置も含めてそんなに変えるつもりはないです。再演の場合って、最初から全部変えたい作品と、変えたくない作品があるんですよ。

――再演と一口に言っても、芝居によって作り方が違ってくる。

 ええ。『キル』の場合は、1997年のときもそうだったんだけど、初演のものを1枚の絵だとしたら、気になるところを少し修正する分にはいいけど、それ以外のところは大きく変えたくないんです。舞台装置とかも全部含めて、ひとつの空間であり作品だから。これを改めて新演出するっていうのは……やれないことはないだろうけど、初演の演出よりいいものにする方法は、今の僕には思いつかない。これでいいって思いのほうが強いんだ。この『キル』の空間が、僕は好きなんでね。

――前回公演の『THE BEE』では同じ作品を、まったく違う演出でふたつの作品にされていました。

 そうですね、あれもまた全然違う種類の作品なので。きっと、ああいう風にこの『キル』を残しておいて、もうひとつやるっていう企画だったらアリかもしれないけど(笑)。ただ、オープニングやラストが、あれ以上にいいものを思いつくってことはないと思うなぁ。

――妻夫木さんはこの作品が初舞台となります。野田さんが妻夫木さんに期待することというと、どういうことでしょうか。

 性格的には、まったく大丈夫だと思いますよ。ワークショップで彼の演技を見て「彼は舞台、できるな!」って印象が強くあったので。ヤツらしいテムジンを作ってほしいかな。もちろん、僕のなかでも彼を見ながら新しいテムジンを作りたいと思っています。巨大な空間としてはこれまでと同じだけど、役者が違うといろいろと空間の使い勝手も変わってくるしね。

――妻夫木さんは、ワークショップではどういう感じだったんですか。

 なかなかよかったですよ。17年前、唐沢(寿明)と初めて仕事したときみたいな感じ。軽さがあって、飄々としている。わりと、なんでもやってみようというタイプですね。そしてなにより、声がきっちり通る役者さんだというところもいい。特にテムジン役は、声がきっちり通らないといけないからね。

――一方、広末さんは野田さんの作品には初出演ですね。

 実は、まだ楽屋とかでしか会ったことがなくて、彼女に関してはよく知らないんで、カンだけなんだけど。きっと、このシルクという役にはとても合うんじゃないかと思っているんですよ。一見、透明だけど、実はどうなんだろう? っていう興味をもたせるじゃない? 

――そうですか?(笑)

 そういうほうが、役者としては絶対におもしろいはずなんですよ。単純に「よろしくおねがいしまーす!」って軽く言う人じゃないような気がする。舞台役者って人間が出ちゃいますからね。薄っぺらくて浅い人より、この人、もしかしたら?! って思わせるほうが、舞台が楽しくなるじゃないですか(笑)。

 

肉体とその場の空間だけでなんでも表現できるのが演劇。そういう、芝居じゃなきゃできない表現をこの作品で感じてもらいたい

――野田さんにとって『キル』は、どういう思い入れのある作品ですか。

 いろいろなことが、大きく変わった作品です。ワークショップというものも、このときまでやったことがなかったし。NODA・MAPとしての第1回作品でもありますしね。演出的にも、それまでの劇団をやっていたときの、過剰にいろんなものを出して引っ掻き回すようなスタイルをここから変えた。それに『キル』より以前は、あんまりこの国にも布1枚をバーンと使うような演出ってなかったと思うんですね。今はもう結構、頻繁にそういう演出も使われるようになったけど。このときは、確か少なくとも最初の2週間くらいは賛否が分かれていたような気がします。

――最初は、お客さんにもとまどいがあったんでしょうか。

 そんな気がしますね。道具も椅子くらいしか使ってなかったりしますから。それまでの自分の劇団を観ていたお客さんとかは「コイツ、留学してロンドンにかぶれて帰ってきたんじゃないか」と思ったりしたんじゃないかな(笑)。別にかぶれたわけではなく、イギリスで「稽古場って椅子しかないんだよな」ってことに気づいただけなんですけど。よく稽古のとき「この椅子はアレの代わりね」って言って使っているわけ。それを本番でも椅子のまま使えばいいじゃんってことなんです。それ以降、僕の舞台では椅子って結構、重要なものとして使っていて。

――そういえば、よく登場しますね、椅子。

 そうなんです。他のモノを出すことには『キル』以降、非常に慎重になっていますね。でも役者って、うまくいかないときはモノに逃げるものなんですよ。「これ、使って演技していいですか?」って。でもモノがあると、その次に行きにくいんですよね。ここにコップがあると、それを処理してからじゃないと次のシーンには行けない。扉があると、そのことでその場の空間の大きさがある程度決まってしまうし。だけど扉を使わずに演技で表現していれば、次の場面になればその範囲は忘れてくれる。

――舞台の大きさを意識しなくなりますね。

 そう、明かり(照明)をチェンジするだけで、大きさを自由に変えられるようになる。そうやって、モノがなくても明かりひとつで舞台の大きさもなんでも自由に変えられちゃうのが演劇の強みで、おもしろさでもある。すごくちっちゃいところから巨大な宇宙空間までポンと飛ぶとき、それを映画でやろうとしたらものすごく金がかかるわけでどうしてもハリウッドには勝てない。でも演劇だったら、役者の肉体とその場の空間だけでなんでも表現できる。そういう意味では『キル』は、大風呂敷を広げて言わせてもらえば(笑)、そういうことを宣言した1作目だったと思うんですよ。だから時々、ここにちょっとたちかえりたくなるんです。

――今回、お客様にはどういうことを感じ取ってもらいたいですか。

 それはやはり、芝居じゃなきゃできない表現というものを、この作品で感じてもらいたいという気持ちはあります。『キル』を今までに観たことある人には、役者さんが今回は極めて新鮮だからぜひまた改めて観ていただきたい。そして観たことない人ももちろん、ぜひぜひぜひ! 観てほしいですね(笑)。

 

写真/坂野則幸
取材・文/田中里津子

野田秀樹 profile

 1992年、劇団夢の遊眠社解散後、1年間の英国演劇留学を経て、NODA・MAP設立。1994年の第1回公演『キル』発表以後、NODA・MAPとしては本作を含め13本の本公演、4本の番外公演、1本の一人芝居、2本の海外製作公演で作・演出・出演の三役をこなす。NODA・MAP以外でも、歌舞伎の脚本・演出、オペラ演出、海外とのコラボレーションなど精力的な活動を展開中。本年は、2006年にロンンドンSOHO THEATREで上演し、高く評価された英語による戯曲『THE BEE』を、英語バージョンと日本語バージョンを連続上演。観客の度肝を抜く衝撃作として注目を集めた。

 

STORY

 羊の国(モンゴル)の洋服屋の息子テムジンは、父の憎しみを受け成長するが、父はファッション戦争に敗れ絶命する。そんな父の遺志を受け継いだテムジンは、祖先の名を冠したブランド「蒼き狼」による世界制覇の野望を抱き、羊毛の服で大草原のファッション界を制していく。そして、腹心・結髪の仲介で絹の国(中国)から来た娘シルクと恋に落ちるが、シルクは絹の国に連れ去られてしまう。怒ったテムジンは祖国の羊を焼き捨て、敵国に攻め入りシルクを奪い返す。やがて、妻となったシルクに息子バンリが誕生し、父と同じ宿命を背負ったテムジンは、今度は自分が息子にとって代わられる恐怖に襲われるようになる。しかし、その後も外征を続け、ついに世界制覇の夢が達成するかに見えた時、西の羊(西洋)の地から、「蒼い狼」という偽ブランドが出現し、「蒼き狼」の行く手を阻む。その制圧に遣わしたはずのバンリは消息を絶ち、新たなデザインさえも「蒼い狼」に盗まれ追い詰められるテムジンだが……。

 

出演