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e+ special interview市村正親
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日本の演劇界随一の名優・市村正親が、18〜19世紀に実在した英国の天才俳優・エドマンド・キーンに扮する舞台『キーン』。実存主義哲学で知られる、あのジャン・ポール・サルトルが翻案し、2007年には英国を代表する俳優、サー・アントニー・シャーがロンドン・ウエストエンドで演じて大評判となった話題作だ。 天才的な演技派俳優でありながら、私生活では徹底したダメ男だったキーンをめぐる、恋愛騒動アリ、シェイクスピアの劇中劇アリの傑作コメディ。軽妙な演技と重厚な芝居、そのどちらをも得意とする市村ならではの、見応えたっぷりのステージが展開されるはず。 “天才俳優”を演じる意気込みを、市村に聞いた。 |
実在の名優、エドマンド・キーンを演じるなんて
「大役がまわってきたな!」という感じがします
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――『キーン』をやることが決まって、まず思ったことはどういうことでしたか。 「いよいよ僕もサルトルをやるのか!」と実感したのが、最初でしたね。 ――昔から、サルトルの作品はご存知だったんですか。 この『狂気と天才』という作品があるというのは知っていたし、あとはサルトルといえば『悪魔と神』や『汚れた手』かな。実存主義の権威、ジャン・ポール・サルトルの作品は、もちろんいい作品ではあるけれど、ちょっと難しいイメージもあるじゃない? もちろん、今回は『キーン』というタイトルで上演しますけれども、この『狂気と天才』っていう原題にも以前からかなり興味は持っていました。実在したシェイクスピア俳優の、エドマンド・キーンを自分が演じるなんて「大役がまわってきたな!」という感じもしますね。今まで僕も『リチャード三世』、『ハムレット』、『ヴェニスの商人』のシャイロックといろいろやってきましたけど、キーンという人はシェイクスピア俳優の中でも特に名優とされた人ですから。シャイロックを演じてから、それまでの悪人のイメージからより人間らしいシャイロック像に |
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なったということですし。やはり、並々ならぬ役者ですよ。今回は、シェイクスピアの書いた役ではなく、そんな“役者”を演じるわけです。そういう意味では自然に勉強になることもあるだろうし、純粋に楽しみでもありますね。 ――劇中でも、シェイクスピア作品を少し演じられる場面があるとか。 劇中劇では『リチャード三世』と『オセロー』をやるんですよ。僕、実は『オセロー』をまだやったことないんです。『オセロー』は自分のガラじゃないと思っていたからね。だけどガラじゃないと言っていながらも、だんだんそういうことがやれるようになってきているのかなって気もする。まあ、それがどう転ぶか、ですよね。 ――市村さんがシェイクスピア作品を演じるときと、キーン役としてシェイクスピア作品を演じるのとでは、演技自体は変わってくるんでしょうか。 うーん、どうなんだろうねえ。それは、これから演出家と相談しながら考えますよ。でも僕はどうしたってエドマンド・キーン本人にはなれないわけだから。だから僕は僕なりに、リチャードなりオセローなりを、自分でつかんだ役として表現するしかないのかなって気はしています。 ――演出をされるのは、ウィリアム・オルドロイドさんです。 彼は日本で仕事をするのは、今回が初めてなんです。非常に爽やかな青年という感じの方ですよ。ただ今回の舞台は、基本的にはロンドンでアントニー・シャーがエイドリアン・ノーブルとやった演出スタイルを持ってくるのでね。そのアントニー・シャーも、リチャード三世が持ち役、当たり役とされている方なんです。だから今回、幕開きはリチャードから始まるわけですが、それはシャーがやるということから、そういう構成にしてあるの。僕も、一応リチャードはやったことがあるので、その点ではちょうどおもしろいことになるんじゃないかな。 ――まさに、市村さんにもちょうど合った演出になっているということですね。 そうだよね。しかもシャーも、イアーゴはやっているんだけど、オセローはやったことがないらしいんです。おもしろいことに、シャーとは意外と共通点が多いんですよ。 |
キーンは破天荒な人間なので、相当エネルギーがいる役
でもそれだけに、やりがいのある役だとも思います
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――脚本を読んだ感想としては、いかがでしたか。 おもしろいですよ! 役者の世界に女がからんできますからね。さらに、酒もからんでくるし、金もからんでくる。そういう意味では、役者というものの人間らしい部分がいっぱい描かれているんです。まあ、一時代前の役者の典型ですけどね。 ――そうなんですか(笑)。 僕なんかは逆に、健康そのものだけど(笑)。キーンはホントに酒浸りで、『リア王』をやっていながら、『ハムレット』のセリフをしゃべってしまったりするので。だけどそれを絶妙にごまかせるという、そういう巧さもある。 ――今の時点で、そのキーンという男をどういうふうに演じようと思われていますか? あくまでも市村じゃなく、エドマンド・キーンに近づかなければと思う。だけど、それこそ100年以上前の俳優さんでしょ。今の時代とはかなり違うよね。たとえば、黒澤映画を |
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やっているころの映画のつくり方と今とでは違うのと同じように、ほかになんの娯楽もないころの舞台なわけだから。芸術家というよりは、職人に近いところもあるんじゃないかな。あと、大道芸人からあがってきた俳優で、若い頃はバック転きったりもしていたらしいんですよ。だから、僕の場合は多少そういうこともできるから、身体を使ってやってみるのもいいかなとも思っています。 ――キーンという男の魅力はどういうところに感じられますか。 常に、なにかを見つめているって感じがするんです。見つめているものがなんなのかってことは、これから探っていくわけだけど。エレナという人妻に恋心を抱いていて、嫉妬のあまり思わず芝居をやめて狂気に陥っちゃう部分があるんですが、そのときの芝居が、嫉妬に狂うオセローの役だったりしてね。 |
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――セリフがリンクしてくるんですね。 そう。そのへんがどういうふうに重なっていくのかも、おもしろそうだよね。僕らも俳優をやっていて、たとえば不幸があったりすると、その日はどうしても心のなかにそのことを持ちながら芝居をしなきゃいけなくなって、自分の実人生と役の人生が重なっちゃうみたいなことがあって。今回はバックステージものだから、そういうことで俳優が右往左往したりする部分もあるんですけどね。そんなことがあると、ものの見事にそういうことを忘れさせて演じるときもあれば、グチャグチャになっちゃうこともある。だけどグチャグチャになったからといって、芝居が良くないかと思えばそうじゃないんだよね。意外に、自分が疲れきっているときのほうが、お客様にとってはいい芝居だったりするし。自分が今日はうまくできたと思ったときに限って「なんだか今日の芝居はくどかったねえ」と言われたりするから。そういうことも、お客さんは裏から見られるわけで。おもしろいっちゃおもしろいよね。逆にこっちは難しいっちゃ難しいけど(笑)。 ――確かに、そうですね(笑)。 |
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あ、それとシェイクスピアが好きなお客さんにとっては、たまらない芝居かもしれない。日常会話のあちこちに、シェイクスピアのいろんなセリフを使いながら物語は進むので。しかも今回は、翻訳の小田島さんがなかなかシャレた翻訳をしてくれているので、きっと聞きやすいとも思いますよ。 ――今回、本番に向けて市村さんが一番楽しみにしていることは。 やはり、このキーンという実在のシェイクスピア俳優の裏表というか、俳優のすったもんだが、お芝居として演じられるところが非常に楽しみです。実際の僕自身と違って(笑)、キーンはかなり破天荒な人間ですからね。相当、エネルギーのいる役だなとは思います。それだけに、やりがいのある役だとも思う。でも難しい役だからこそ、お客さんは喜んでくださるということもあるし。これからアンテナをあちこちに張って、いろんなところからヒントを得て、キーンに近づきたいですね。ま、強いて言えば、僕がどこまで不健康になれるんだろうということかな。 ――(笑)。実際には不健康にならなくても。 十分な睡眠をとっていながら、どれだけ不摂生ができるか、ということです。酒も飲まずに、どれだけ肝臓が悪そうな芝居ができるか(笑)。まさに役者にとって一番大事なことは、イマジネーション、想像力ですから。ともかく(笑)、今までにないものができたらなと思っていますよ。 |
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写真/渡辺マコト |
市村正親profile |
1949年1月28日生まれ。埼玉県出身。A型。西村晃の付き人を経て、1973年に劇団四季の「イエス・キリスト=スーパースター」でデビュー。以後、ミュージカル、ストレートプレイ、一人芝居など様々な舞台に出演。今後は、7月〜8月に帝国劇場で『ミス・サイゴン』、12月からは『ラ・カージュ・オ・フォール』に出演する。また、4月よりTBS系『THE
世界遺産』(毎週日曜18:00〜18:30)のナレーションをつとめている。 |
<物語> |
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英国演劇界きってのスター俳優、エドマンド・キーンは、その天才的な演技とともに狂気ともいうべき破滅的な私生活を送る男としても名を馳せている。恋の浮名を流した女性は千人に及ぶとも言われるほどだ。酒は毎晩浴びるほど飲み、争いごとは絶えることなく、金遣いの荒さから借金も天文学的な数字になっている。懲りないキーンの今のターゲットはデンマーク大使夫人のエレナ。彼女との恋の駆け引きに夢中になっている。一方、キーンと親交が深く、キーンを崇拝するがあまり、彼が愛する人をもれなく愛してしまう皇太子は、今回もキーンに対してライバル意識むき出しで、エレナにちょっかいを出している。 ある日、そんなキーンのもとにアンという若い娘が飛び込んできた。ネヴィル卿の婚約者である彼女は、熱狂的なキーンのファンであった。キーンの舞台は欠かさず観ていたアンは、自然とシェイクスピア劇に登場する全ての女性役の台詞を覚えてしまっており、私も何か演じたいとキーンに訴える。そんな折、キーンは昔身を寄せていた劇団の救済のため急遽十八番の「オセロー」を上演することに。ただ突然のことゆえ、相手役がおらず、目の前にいたアンにデズデモーナをやってもらうはめになるのだが……。 |




