the company『1945』

INFORMATION

[公演日・会場]
2008年10月25日(土)〜11月3日(月・祝)
世田谷パブリックシアター

[発売日程]:プレオーダー、:一般発売
: 8/17(日)12:00〜8/24(日)18:00 : 9/6(土)10:00〜

e+ special interview “the company”『1945』

 ニューヨーク・ブロードウェイの舞台ではリチャード・ギアやアル・パチーノら、ロンドンではアントニー・シャーなど、名だたる俳優と組み、舞台に映像にと作品づくりを続けている世界的な演出家、ロバート・アラン・アッカーマン。彼が日本の俳優と立ち上げた、新たな演劇集団が、the companyだ。  そのthe companyが、2008年4月に上演した刺激的な群集劇『バーム・イン・ギリヤド』に続き、この秋いよいよ本格始動を開始する。黒澤明監督の映画『羅生門』の原作としても知られる芥川龍之介の短編小説『藪の中』を基に、人気劇作家・青木豪が新作戯曲として書き下ろす『1945』。太平洋戦争終結直後の日本を舞台に、ある男の死が語られていくのだが、その真実とは……?  アッカーマン演出作品には久々の参加となる高橋和也、これが初舞台となる中村ゆり、そしてthe companyのアソシエイト・アクターにしてアソシエイト・アーティスティック・ディレクターでもあるパク・ソヒに、今回の舞台への想いを語ってもらった。

the company1945

e+ special 高橋和也interview

ミステリアスな話なので独特の緊張感を出して、お客さんがのめり込んでいける舞台にしたい

高橋和也

――アッカーマンさん演出の舞台に立たれるのは、久しぶりですね。

 アッカーマンさんとは、1993年の『スラブ・ボーイズ』というお芝居でご一緒させていただいてからなので、もう15年のつきあいになるんですよ。その後も『エンジェルス・イン・アメリカ(1994年)』や『蜘蛛女のキス(2000年)』や……たくさんの作品を一緒にやらせていただいて。僕のなかでは、芝居を教えていただいた先生みたいな存在なんです。だから今回は、そのボブさんにこれまで自分が俳優としてやってきた成果を見せたいなと思っているんですよ。

――アッカーマンさんの舞台の魅力は、どういうところに感じられていますか?

 やはりディテールの細かさや、深みですね。舞台に存在する人物たちの立体感というか。彼らのそれまでの人生や、それからその人たちはどう生きていくだろうというところまで、見せてくれるんです。濃密なんですよ、舞台の世界が。小道具ひとつとってもそうだし、舞台に存在しているもの、ひとつひとつに意味があって。そういうところにも、すごくこだわる人なんです。

――アッカーマンさんのことを、芝居に関わるみなさんが全員“ボブさん”と呼ばれるので、すごく慕われているんだなっていうことが伝わってきます。

 一度、一緒に芝居をつくれば“ボブさんズチルドレン”みたいなところがありますね(笑)。ボブさんとは演出家と役者というものを越えて、人間対人間みたいなつながりが生まれるんです。ボブさんの人徳ですよ。

――そして今回の高橋さんの役どころはどういうものになりそうでしょうか。

 事件の当事者というよりも、それを観察してずっと見届けていくような立場の人ですね。実際そこには、ヒロインとの因縁めいた関係があったりもするんですが。まあ、物語の始まりから最後までをずっと見届ける男ですよ。戦後の、メチャクチャになってる闇市のなかにある掘っ立て小屋というかバラックみたいなところでお酒を出すお店みたいな場所でね。裏の世界に通じているような、いわゆる事情通の男。その男の店にいろんな人が訪ねてくるという感じです。

――その役を、今の時点ではどう演じようと思われていますか。

 こだわりたいところは、戦後の日本でどういう風に人が暮らしていたか、ということ。本当になにもなくなったなかで必死に毎日を生きているさまが、ちゃんと出せたらいいなと思うんです。それとミステリアスな話なので、独特の緊張感も出したいですね。お客さんがどんどん興味を持ってのめり込んでいけるような、そんな舞台になればいいなと思っています。そのへんはたぶん、ボブさんが得意とするところでもあるので。

――どういう演出をされるのか、とても楽しみです。

 もともと日本人がつくった話を、アメリカ人のボブさんがどういう風に演出するのかは、自分が出ていながらもものすごく興味のあるところ。やっぱり見方が違うと思うんですよね。日本人の僕らが見ているものと、ボブさんが見る角度というのは、また違った世界になってくると思うんです。それが果たしてどういう形で舞台に浮き上がってくるか。

――『藪の中』という原作のどの部分に注目するかで雰囲気もずいぶん変わりそうですし。

 この原作自体が本当にミステリアスですからね。読む人によって何通りもの解釈ができそうな話ですし。すべてが嘘かもわからない。

――どこかに真実があるかもしれないし。でも、それがどれかは。

高橋和也

 わからない、というね(笑)。ボブさんが漠然とおっしゃっていたイメージというのは、1945年という時代を通しながらも、現代、今の時代とつながっている世界のわからなさ加減とか、抱えている問題とか。そういう共通した部分も、ボブさんはうまく表現してくれるはずなので、ぜひそこにも注目してほしい。結局、今の日本が始まったのって、戦後、あの時代がターニングポイントになっている。日本が今、抱えている問題が、この年をきっかけに始まっているというのも、おもしろいところだと思います。

――では最後にお客様に、お誘いのメッセージをいただけますか。

 世界の一線で活躍してきた演出家が、この東京で日本の役者と一緒に日本発のオリジナル作品をやるという、画期的な作品です。日本の演劇にとってもエポックメイキングになるような作品だと思うので、みなさんにもぜひ一緒に体験していただきたい。僕らも精一杯、ベストオブベストを出していきますので、期待してください。

高橋和也profile

 1988年に男闘呼組としてデビュー。93年の解散以後、俳優として舞台、映画、ドラマで活躍。主な出演作に、ロバート・アラン・アッカーマン演出による舞台『スラブ・ボーイズ』『蜘蛛女のキス』のほか、『連鎖街のひとびと』『スリーデイズ・オブ・レイン』『怒りをこめてふり返れ』『写楽考』『眉山─びざん─』『風林火山〜晴信燃ゆ』、映画『八つ墓村』『マルタイの女』『Hush! 』『日本の青空』『歩いても歩いても」、ドラマ『ショコラ』(TBS)、『秘太刀馬の骨』(NHK)、 NHK大河ドラマ『風林火山』、ほか多数。韓国ドラマ『美しい日々』『オール・イン』などで、イ・ビョンホンの声の吹替を務めている。
http://www.alpha-agency.com/

e+ special 中村ゆりinterview

目指すところは完璧! でも舞台は未知の世界なので、とにかく今は前向きにやるしかないです!

――このたび『1945』に出演されることになって、まずどんなことを思われましたか。

 私、今回が初めての舞台なんです。もともと舞台を観ることは好きでいろいろ観に行っていて、そのなかでも特にベニサン・ピットでやる濃密なお芝居が大好きなんですね。ボブさんはそのベニサンでよくお芝居をやられている上、ワークショップもなさっていて。そういう意味では私にとっては今回、この上ない条件でした(笑)。このチームと一緒にやれるなんて、これはもう食いつくしかない! と思いました。

――中村さんが演じられるのは、どういう役柄になりそうなんですか?

 この作品の舞台になっているのは戦後で、あの時代って今の女性よりも自分自身の選択肢って少ないじゃないですか。女性が自分の意見なんてあまり持てなかった時代で、きっといろんなものを捨てて人生を選んでいたんだと思うんです。そういう時代って、男の人も女の人もみんな心が荒れていたんだろうとも思うんですが。そのなかでキレイごとじゃなく自分がいかに生き残るか、本能のままに突き進んでいくというのは、とても人間くさいですよね。私が今回演じる女性も、すごくそういう部分がある。よくある戦争映画とかだと“あなたにお仕えします”とか“私たちは黙って家を守ります”って女性像ばかりでしたけど、それって今の私たちの感覚では「そんなこと思えるはずないじゃん!」って思ってしまう。だって女性だって本当は、自分の欲望はあったはずだし。

中村ゆり

――ということは、キャラクター的には感情を抑えるタイプではなくて、本音が出せる女性?

 きっとそれまで、抑えて抑えて生きてきたんだけど、でもそんなことも言っていられないくらいになっているというか。そのころの女性はみんな守られたいし、守ってもらえるように、そういうところを選んで生きてきたんだろうけど。でも結果的にすべて、なにもかもがなくなって、どんな人も自分の弱さや醜さが出てきてしまったとき、じゃ、自分に残っているものってなんだろう。自分を守ってくれるものがなくなったとき、女性はどうやって生きていくんだろうってことなんです。

――アッカーマンさんにはどういう印象をお持ちですか?

 サンタさんみたいですよね(笑)。キャラクターにできそうな、あったかそうなイメージがあります。もう、初めて会ったときは、台本を読んで目の前で演じなきゃいけなかったんですけど。そのときも「ここをもっとこうやってみてくれる?」みたいな感じで、こちら側にすごく自由があるような演出のされ方だったんですね。だから、役者に押し付けるのではなく、役者の考えを手直ししてくれるタイプの方なんじゃないかと思います。

中村ゆり

――念願の初舞台ということですが、舞台のどういうところに魅力を感じていましたか。

 長い稽古期間があって、同じことを何回もやれるというのは、とてつもない馬力になるんじゃないかと思ったんですよね。私個人としてはそういう意味でも自分をもっと高めたいから、舞台をやりたいやりたいって思い続けていたんですけど。でも舞台を観に行って、とてつもなくうまい人のお芝居を見せられると、ドーンと落ち込んで帰っていたんですよ。「あの人、めちゃくちゃうまかったなー!」って。

――演技がうまい人を見ると、落ち込むものなんですか?

 「自分があそこまでいけるまでには何年かかるんだろう……」って思ってしまって(笑)。でも、そういう舞台を観たあとって、あきらかにパワーももらえるんですけどね。

――では、今度はそのパワーを与える側にならなきゃいけませんね(笑)。プレッシャーはありますか?

 感じていない、と言っておきます(笑)。もう、未知の世界なので、今は前向きにやるしかないです! 目指すところはとにかく、完璧にやりたいということだけですね。

――特に今、一番楽しみにしていることというとどんなことですか?

 打ち上げです!(笑)みんなで「やりきったねー」って言って、おいしくお酒が飲めたらいいですよね。自分のなかでは、この舞台が今年の集大成だと思っているくらいなので。自分が本当に変われた! って思えるくらいになっていたいな。この作品はクオリティも高いので、たくさんの人に足を運んでいただきたいです。演出家の方も世界的に素晴らしい方だし、キャストもみなさん素敵な方ばかりですし。これは観ておかないとホントにもったいないですよ!  と、ここはもう言い切っておきます!!(笑)

中村ゆりprofile

 1982年、大阪府生まれ。シンガーとして活躍後、演技に関心を寄せ、本格的に俳優業に活動の場を移す。映画『偶然にも最悪な少年』(監督:グ・スーヨン)、『JUDE/ユダ』(監督:瀬々敬久)、『さくらん』(監督:蜷川実花)を経て、『パッチギ! LOVE&PEACE』(監督:井筒和幸)で約2300人の中からヒロインのキョンジャ役に抜擢される。同作で第3回おおさかシネマフェスティバル新人賞、2007年度映連賞 女優賞を受賞。以後、映画『天国からのラブレター』(監督:山口円)、ドラマ『東京大空襲』(NTV)、「ちふれ」CMなどに出演。平井堅の“キャンバス”PVにも出演している。

e+ special パク・ソヒinterview

お客さんがつい反応して声を出してしまうような、そんなテンションの舞台をつくりたいんです

パク・ソヒ

――『1945』には、企画の段階から関わっていたとのことですが。

 1年くらい前からどんな作品をやろうかと、プロデューサーとボブさんと僕の3人でずっと考えていたんです。NYの本屋で戯曲を買ってきて読んだり、映画もいろいろ観たりしていたんですが、ある日突然『羅生門』はどうだろう? って思いついたんですね。誰が言い出したかは忘れちゃったけど(笑)。ボブにとっては初めての日本の戯曲になるからいいかもしれない、だったら、その時代を戦争直後に置き換えてやったらいいんじゃないかってことになって。だってまさに『藪の中』状態だったと思うんですよ、終戦直後は。すべての価値観がひっくり返っていた、その混沌と価値観の多様さが、時代を移すことでおもしろくできるんじゃないかと思ったんです。

――それで、戦争直後の時代を選んだ。

 そうそう。この『藪の中』っていう作品は、真実ってなんだろうっていうことですよね。黒澤明さんの映画『羅生門』にしても、観る人によって視点は全部違う。しかも、誰がどういう嘘をついているのか、今でも僕はわからないくらいですから。

――読むたびに、観るたびに違うような気もしてくるし。

 そうでしょう? だから僕はもう考えるのは20分くらいでやめちゃうんですけどね(笑)。それで、ボブさんは最初やる気満々で自分で脚本も書いちゃうくらいの勢いだったんだけど。でもやっぱり日本の物語だし、時代的なことや、日本人にしか書けないこともあるだろうからということで、脚本は今をときめく青木豪さんにお願いすることになりました。

――今回演じられるのは、具体的にはどういう役柄なんですか。

 黒澤さんの『羅生門』でいったら、三船敏郎さんがやった多襄丸(たじょうまる)。その字を取って、大木襄って役名なんですよ。これがおもしろいことに僕、“ジョー”って名前の役が連続で3回目なんです。『エンジェルス・イン・アメリカ(2007年)』でも『バーム・イン・ギリヤド(2008年)』でも“ジョー”役だった。

――それは、おもしろいですね。

 珍しいですよね。もう、芸名もジョーにしちゃおうかな(笑)。ちなみに、今回のジョーは悪いヤツです。といっても、価値観がひっくり返った時代だから。そういった意味では大木ジョーくんが本当に悪いヤツかと考えると、そんなに悪くはないのかもしれない。結構、おどけているところもあるしね。一応、設定としては闇市を仕切っている人物で、闇市にいる人間だったらその名を聞いたことない人はいない、泣く子も黙る大木ジョー、みたいな存在ですね。

――改めて、アッカーマンさんの演出の魅力はどういう点に感じられていますか。

 包容力があって、失敗してもなんでもいいからやってみようって気持ちにさせてくれるんですよ。どこまでも深いところまで俳優はいかなきゃいけないじゃないですか、そのキャラクターを掘り下げていくためには。それをどんどん後押ししてくれるんです。あと、俳優を本当にかっこよく見せることをやらせたら、ナンバーワンですね。しかも、自分のなかにあるものをうまく引き出してくれるし、それで役づくりをさせてくれる。その引き出し方が、またうまいんです。

――ではお客様に、お誘いのメッセージをいただけますか。

パク・ソヒ

 the companyでやっていきたい芝居というか、つくりたい舞台というのは、あまりに落ち着いて観ていると、緊張して気持ち悪くなってしまうかもしれないような(笑)。そんなテンションのものをつくりたいと思っているんですね。つまり、ひいて観るのではなく、エネルギーをちょうだい、みなさんも参加してくださいねということです。

――観客も、役者さんたちと一緒になってアツイものを感じてほしい。

 そうです。つい、声を出してしまったり、驚いてワーッてなってしまったり、アクティブに反応してほしいんです。1945年っていうのは、誰もがどん底から這い上がろうとしているエネルギーを持っていた時代。たとえば自分の親やおじいちゃんたちも持っていたはずの、そういうエネルギーを、僕たちキャストががんばって舞台上に持ってきますので、それを体感してください。約600人のお客さんと、僕ら10数人のキャストとで、一緒になってカオスをつくりたいです。

パク・ソヒprofile

 the companyアソシエイト・アクター/アソシエイト・アーティスティック・ディレクター。早稲田大学卒業後、文学座附属演劇研究所に入所。ロバート・アラン・アッカーマン演出による tpt『BENT』の主役に抜擢され、本格的舞台デビューを果たす。2003年、文学座研究所を退所。以後、アッカーマン演出作品ではtpt『エンジェルス・イン・アメリカ』『楡の木陰の欲望』『三人姉妹』、the company『バーム・イン・ギリヤド』、tpt『血の婚礼』に出演。ドラマ『SP』(CX)『トップセールス』(NHK)、映画『パッチギ! LOVE & PEACE』『カメレオン』、『THE RAMEN GIRL』(08年秋公開予定)など映像分野でも活躍。

 

写真/坂野則幸
取材・文/田中里津子

STORY

 1945年秋。太平洋戦争終結直後の日本。戦災で焼けこげた商店街のアーチの下で、二人の男が遠くに見える進駐軍の兵舎を見つめながら、語り合っている。昨日、一人の男が殺された。その男は、美しいヴェール付きの帽子で顔を覆った若妻を伴い、混沌とした終戦直後の闇市へ高級車に乗って現れた。そしてその夜、銃声が鳴り響いた──。失われた想い出、捨て去ったはずのプライド、消えない欲望、泣くように響くジャズ・トランペットの調べ。食い違う目撃証言と人々の心の声が、闇の中で錯綜する。真実はいったいどこに隠されているのか?

the company『1945』とは?

 the company旗揚げ公演のタイトルは、『1945』。青木豪がthe companyのために書き下ろした、〈芥川龍之介 meets “フィルム・ノワール”〉の新作ミステリ・ドラマである。黒澤明監督の映画「羅生門」の原作としてもあまりに有名な、芥川龍之介の短編小説「藪の中」に想を得た『1945』は、終戦直後の日本、闇市の混乱のさなかで起こった殺人事件をめぐる謎物語。戦争がもたらした正義の逆転──。闇に隠された真実の前に立ちすくむ人間たちは、何を考え、どう生きるべきなのか。『1945』は、古くから語り継がれてきた物語を通し、現代社会の闇を鋭く暴き出していくはずだ。