![]() |
||
|
e+special interview 高泉淳子×白井晃
バレエファンにとっての『くるみ割り人形』や、クラシックファンにとっての『第九』のように、演劇ファンにも「これを観ないと年が越せない!」という作品がある。 それが『ア・ラ・カルト』だ。 1989 年の初演以来、決まってクリスマスの前後に“開店”し続け、今年は 18 年目。舞台は、あるレストラン。 高泉淳子、白井晃、陰山泰が順繰りに演じるさまざまな客が店を訪れ、ギャルソンがワインや食事を運ぶ中、ドラマが繰り広げられる。 今回も、元気いっぱいの少女から物静かな老女までを自在に演じ分ける高泉淳子と、落ち着いたオーナーから個性爆発の女装歌手までを演じきる白井晃に話を聞いた。 |
![]() |
レストランでの会話って、キャラクターごとにいろんな人生の断片が見えてくるから面白いし、演劇的だと思ったんです(白井)
| ――『ア・ラ・カルト』も、なんともう今年で18回目の上演ですね。
白井 継続的にできたらいいなとは思っていましたけど、こんなに長く続くとは思いもしませんでした。 高泉 私も、3年くらいは続くかなーとは思ったけど、まさかね。初演当時は今みたいに、町にレストランもこんなにたくさんなくて。 白井 手前味噌ですけど、あのあとですよね、『王様のレストラン』とか『料理の鉄人』とか、ああいった料理系の番組が現れたのも。我々のほうが先に始めていたんです(笑)。
白井 遊◎機械/全自動シアターという劇団はもともと、エチュード、つまり即興で芝居をつくっていたところがありまして。稽古でもよく、レストランでの男女の会話を即興でやっていたんです。キャラクターごとに、いろんな違う人生が見えてきたりするもんだから、それが面白くて。 |
――それは面白そうなシチュエーションですね!(笑)
高泉 ああ、あれはスゴかったよね!(笑)
白井 その女の子に写真を見せようとしているんだけど、暗くて見えないからって、いきなり店員に向かって指鳴らして「キャンドル!」って叫んでて(笑)。もうこっちは、笑いをこらえるのに必死。
高泉 いちいち、そんな調子なのよね。「ちょっときみ、ミネラル!」とか(笑)。
白井 女の子のほうは迷惑そうにしているのが、ありありと見えるんだよね。そうやって、お互いの関係が見えるのが面白いと思って。
高泉 これ、使おう! ってことに(笑)。
白井 言ってみれば、その人たちの人生のある一瞬、断片だけを切り取っているだけなんですけど。その背景が見えてくるっていうのは、とても演劇的だなと思ったんです。で、 2 人だけで様々なカップルの姿を演じていく、その間にナマの音楽があったりしたらいいなぁ、と。それで、僕たちがよく、そのレストランのエチュードをやるときにかけていたのがたまたま中西俊博さんの CD だったんです。
――それで、お願いすることにしたんですか。
白井 たとえばこの方のヴァイオリン音色があったらいいですよね、って青山劇場のスタッフに話をしたら「ウチの劇場でこの間、コンサートをやったばかりだよ」って言われて。
――すごいタイミングだったんですね!
高泉 でも、稀だと思いますよ。違うジャンルなのに中西さんは私たちと初めて会って、意気投合して、立ち上げの時から溶け込んでくれたというのは。それがあったからこそ、この作品は生まれて、続けてこられたんだと思う。この出会いは、すごく大きかったですね。
――やはり最初の頃は、試行錯誤の繰り返しだったんですか。
高泉 初日ギリギリまで決まってないシーンがあったりしましたから。初日開けてから順番を変えたりね。
白井 本番直前のゲネプロであったシーンが、本番ではなくなったこともあったな。僕と陰山が女装していて、高泉がおじいちゃん役で。
高泉 わけわかんない(笑)。
白井 いつか復活したらいいな(笑)。やっぱり始めの 2 〜 3 年は試行錯誤でした。でも、今でも『ア・ラ・カルト』の初演の初日が開いた日のなんとも言えない興奮は覚えていますね。ナマのミュージシャンと一緒にやる面白さをすごく感じることができた、本当に幸せな舞台だったし。その後、 5 年くらいたった時に今の構成が見えてきて、 10 年目くらいでゲストを呼ぶ、このスタイルになりました。
――内容的には、毎回、どのくらいチェンジするんですか。
高泉 お話自体は毎年変えています。
白井 基本的にゲストを迎えての ACT3 は、シチュエーションも大きく変えていますが、その他のシーンのキャラクターとシチュエーションは、 10 年目からは大きく変えないできました。
|
去年のショータイムはハードで、死ぬかと思った(笑)。今年もまたハードなものを思いついちゃったらどうしよう!(高泉)
|
高泉 人気のロングランものですからね、書き手としては相当なプレッシャーです。レストランというシチュエーションは変えられないでしょ。季節はクリスマス、お馴染みの登場人物はいるし、お約束事が多い。続けば続くほど、作家は悩みます。前の年よりも絶対にいいものを書こう! って思いますからね。毎年、書く前は蒸発したくなる(笑)。 ――そして、今回のゲストは石井一孝さんですが。石井さんにお願いしようと思われたきっかけは? 白井 僕が演出した『ファウスト』という作品で、彼に出演してもらったことがあって。その後、彼がゲストのROLLYさんや羽場裕一さんとも懇意だったこともあって、僕たちの舞台を観に来てくださったんです。その時に、「次は僕でしょ!」って。 ――ご自分から名乗り出ていらした? 白井 ええ、そうなんですよ(笑)。 高泉 私はあまり彼を知らなかったんですけどね。実は、ROLLYはいつも『ア・ラ・カルト』の季節が近くなってくると連絡してくるんですよ、「今年のゲストは、まだ決まりませんか?」って(笑)。 |
――また出たいんですね(笑)。 高泉 そのうち「もし僕がまた出るのがダメなのであれば、うーん、僕の口から推薦したくはないけれど、最近知り合ったヘンなヤツがいるんですよ。僕よりもヘンで、彼といると自分がノーマルに思えてくるくらい」って言ってきて。それが石井クンだったの。
白井 なんだかヒドい言われようだな(笑)。
高泉 それで、じゃ、一度お会いしてみましょうかということになったら、 ROLLY が彼には内緒でお見合いみたいな席を用意してくれてね(笑)。
――実際、石井さんはヘンな方なんですか?(笑)
高泉 私もおしゃべりなほうですけど、彼のほうがずっとしゃべってますから!
白井 いや、面白いですよ〜(笑)。自分の好きなものに対しては、馬車馬のように走っていくタイプ。役者にはよくいるんだけど、彼の場合は、その勢いが違うというか(笑)。
――今回の舞台、特にお客様にここを観てほしい! というところはどこでしょう。
白井 18 年目ということで、この『ア・ラ・カルト』ももう老舗のレストランになってきましたよね。これからも、老舗ならではの馬力を発揮しつつ、内部的には、僕たちなりの味付けに変化というものを模索したいなとは思っております。いくらいい味でも世の中は変化していますし、みなさんの味の好みも変わりますからね。そして自分たち自体も楽しめる、おいしいと思える味付けに挑戦したいなとは思っています。
高泉 私たちも年齢とともに体力的にはシンドくなってはきているのですが、毎年、なぜか内容がどんどんハードになってきているんですよ。去年のショータイムも今までにないくらいハードでしたしね。以前から、ジャクソン・ファイブがやりたいとは言っていたんですけど、若い時にやっておけばいいのに、なぜか今更やることにしちゃって。去年ばかりは、本当に死ぬかと思った(笑)。
白井 だって陰山さんは稽古中、倒れたんですよ、呼吸困難になっちゃって。
高泉 最初、ただ笑い転げているんだろうと思ってたら、「く、苦しいんだよ……」って。
――よほど激しく歌い踊られたんですね(笑)。
高泉 だから、あそこまでのことはもうしないほうがいいと思うんですけど……、今年もまたなにか別のハードなものを思いついちゃったらどうしよう(笑)。あと、やっぱり一番の楽しみは、石井クンですね。彼が一体どうなっちゃうのかなっていうのは、私も怖いもの見たさで見たいなーって思う。
白井 もちろん、ミュージカルスターとしての彼のファンって大勢いらっしゃるじゃないですか。その方たちが思い描いている石井一孝と、僕たちが見ている石井一孝は明らかに違う! って気がするんですよね。
高泉 でも、『ア・ラ・カルト』では、その違う姿を見せてあげたいな!
白井 みなさんに、「えッ、カズちゃんってこんな人だったの?」って思わせたいです。きっと、それもまた面白いですよ〜!(笑)
写真/渡辺マコト 取材・文/田中里津子 |
高泉淳子profile |
1983 年に、白井晃とともに遊◎機械/全自動シアターを結成。『僕の時間の深呼吸』『ラ・ヴィータ』『ライフレッスン』『メランコリー・ベイビー』『クラブ・オブ・アリス』など 2002 年の解散まですべての作品に出演する。解散後も、 1989 年からスタートした『ア・ラ・カルト〜役者と音楽家のいるレストラン〜』や、『きまぐれ Jazz 倶楽部』などの舞台をはじめ、映画・テレビ出演、エッセイスト、ジャズ歌手として幅広く活躍をしている。 |
白井晃profile |
1983 年〜 2002 年まで、遊 ◎ 機械/全自動シアターの主宰・演出・俳優として活躍する。 1994 年『ラ・ヴィータ』(演出・出演)で平成 6 年度文化庁芸術祭賞を受賞。 2001 年の舞台演出活動全般と 2002 年の『ピッチフォーク・ディズニー』『クラブ・オブ・アリス』で第 9 回・第 10 回の読売演劇大賞優秀演出家賞を連続受賞。現在も、舞台演出家として作品を発表する一方、俳優としても舞台・映像ともに活動している。 |


