イープラスとリビングルームカフェ、そしてサンデー・ブランチ・クラシック
橋本行秀(イープラス代表取締役社長)が秘めたる想いを語る

イープラスとリビングルームカフェ、
そしてサンデー・ブランチ・クラシック

橋本行秀(イープラス代表取締役社長)が秘めたる想いを語る

渋谷は道玄坂、109の横、ユニクロが入っている「プライムビル」5階に「eplus LIVING ROOM CAFE & DINING」があるのをご存知だろうか? この店では、お酒や食事を楽しみながら音楽やアートを楽しめるのが魅力。開店して約3か月が経った今、運営母体である e+(イープラス)の代表取締役社長 橋本行秀氏に話を聞いた。

―― 今更ですが、そもそもリビングルームカフェを立ち上げた目的からお伺いしたいのですが。

橋本:

大きく二つあります。

まず一点目。それは「イープラス」という社名にも絡む話なのですが、イープラスって名前に<チケット>ってついてないじゃないですか。創業時から言っていることですが、<チケット>とつくと業態が規定されてしまうから。チケットに限らず、広くエンターテイメントライフを企画・提案をしたい、という思いがあったからなんです。そういう意味もあり、今年はチケット事業以外に、「場」を持つこと、「メディア」を持つことをテーマに掲げました。

「場」は飲食を交えて大人がライブを気軽に楽しめるカフェ空間を全国に提携を含め5カ所を目標に考えています。 「メディア」はエンタメ特化型のニュースメディアサイト(キュレーション型50%+独自取材50%)である「SPICE」をリビングルームカフェと同時に立ち上げました。

そして、二点目は今、レコードが売れなくなり、ライブの時代ということになっていますが、ライブで食べられるのは上位の一部の人たちだけで、多くのアーティストはライブで食べていける状態にはなっていません。アーティストが食べられないということはイープラスも食べられなくなることを意味します。だから大きなインパクトではなくとも、アーティストが「食べていける仕組み」を我々として提案できないか?いうなれば「アーティスト支援」のようなものをコンセプトとした店を考えられないだろうか、と考えた訳です。その結果、共存するためには飲食との併用が不可欠という結論となり、「ミュージックチャージ(300円)とチップは全額アーティストへ」「店は飲食収入で賄う」という業態コンセプトになりました。

そんな、創業時からの想いと、今のアーティストをめぐるビジネス環境及び日本人口の大人化等をいろいろ考えて、やはりライブカフェはアリなんじゃないかなと。それがこのカフェを作るに至った背景です。

―― 店を立ち上げるのにあたり、何かモチーフにしたものはありますか?

橋本:

「リビングルームカフェ」のネーミングの発想はキャロル・キングのLIVING ROOM TOURでの代表曲「Welcome To Livingroom」から来ています。アーティストが自分の邸宅のリビングルームに友達を招待してアコースティック感覚でここでしか聴けないライブをやる。 このイメージが「リビングルームカフェ」の原点です。

そしてデザインコンセプトは「ニューヨーク」「カジュアル」「ウッディー」「大人の女性」「家とテラス」「センターステージとリビング」等を題材に創り上げました。

―― そんなこんなで3か月。ここまでの運営についてどのような手ごたえ、課題を感じていますか?

橋本:

75点かな?やっぱりライブとカフェを融合させるのは、そう簡単ではないですね。ライブと飲食を融合させた空間はそう例がありませんので、食べながら、飲みながら聴いていいのか?、といった戸惑いをお客様にも感じます。また、ホテルのラウンジのピアノのように音楽がバックグランドミュージックになってもいけないのです。

やはりこれはエンターテイメントの楽しみ方の一つの提案なんですね。
カフェ目的のお客様とライブ目的のお客様が半々ぐらいになるといいなあと思っています。

リビング感覚でこの立地でこのキャパ(総席数350席、ライブエリア200席)さらに、充実した音響、照明環境を持った施設はまずないと思われますので、ここでしか聴けないライブ企画を打ち出してゆくことが今後の課題だと思います。

―― カフェで演奏するアーティスト側の反応はいかがですか?

橋本:

ミュージックチャージ制やチップ制にして、それを全額アーティストにあげるという店の姿勢に感動してくださって、出演したいと応募してくれる人は多いです。今うちのHPに出たい人はお知らせを、という告知を出していますが、すでに300組以上の応募が来ています。我々の想像以上にアーティストの間では話題の店になっているようです。ライブハウス以外にアーティストが活躍できる環境が少ないのだと思います。 我々はこの店のコンセプトを理解してもらえればジャンルにこだわりはありませんので今はアコースティック系が多いですがロックでもパフォーマンスでもいいと思っています。

その意味では日曜日の午後の動員が平日に比べ少ないので、日曜午後のコンサート企画として「サンデー・ブランチ・クラシック」というミュージックチャージ500円でブランチしながらクラシックを聴くイベントを始めたんです。

イープラスのクラシックが好きな会員にも告知をして、テスト的に公演を始めたんですが、これが大好評なんですね。

―― その「サンデー・ブランチ・クラシック」について、もっと詳しくお伺いしたいのですが!
「サンデー・ブランチ・クラシック」。企画物のテーマを「クラシック」にしよう、と決めた理由は?

橋本:

ゆったり200人が座れるリビングルームカフェは、ほぼマイクも使わずにバイオリンやピアノのナマ音が聴け、かつ珈琲、ワイン等飲みながらリラックスした環境で、緊張感のある一般のクラシックコンサートとは全く異なったカジュアルな楽しみ方ができるのではないか?と思ったのです。オペラ等やったら大迫力だと思いますよ。

あとは演奏者の方がどう思うか?という事ですが、1回目に登場したピアニストの反田(恭平)さんは、たまたまお客さんで来ていた一人。店のアップライトピアノをみて「僕、こういう感じの所で演奏してみたい!」と本人が言っていた。という話を聞いて、そこで反田さんのマネージャーに確認したら本人大乗り気という事で、本格的に始める12月の前に2、3公演やってみようということになったんです。

バイオリニストの松田理奈さんはもともと知り合いだったこともあって、「今度こういうことを企画してみようと思うんですがどう思う?」とメールしたところ「素敵すぎる企画!是非参加させて欲しい。子供にも聴かせたいんですが」という嬉しい返事が来たのです。

(反田さん・松田さん)二人とも言ってたんですが、今のクラシックはあまりに敷居が高すぎる。もっとカジュアルな場所もあって欲しい。海外だとよくホームパーティーがあり、そこで演奏をするということも多いらしくて、日本のクラシックの一方向の考え方の枠を壊したいと感じていたところもあったようです。みんな世界的に活動をしている人たちなのに、アーティスト側のほうがむしろ大乗り気で、僕らが「ああ…じゃあ、やりましょうかって押される感じでしたね(笑)。

反田さんの初回コンサートを娘さんと聞きに来ていた松田里奈さんがブログにこう書いていました。

「今日はここで、初めてのクラシックコンサート開催ということで前々から娘と一緒に行こうと思っていました。初回はいま注目のピアニスト反田恭平君。娘ですがポテトを食べながらもナマ音が響いてくるときは全身がピアノに集中していたのがすぐわかりました。あの曲たちがナマ音で、しかも私も経験のないこの位置で聞けました。ふらっと行ってものすごいものを聴ける。しかも子どもとお食事をいただきながら!ものすごいカフェが誕生したものです。渋谷の地下道通っていけるのもママとしてはポイント高すぎです」

―― これまでのクラシックは劇場やホールというきちっとした場所できちっとした服装で聴くもの、というイメージがありますしね。

橋本:

ああいう場所での鑑賞って、拍手の仕方がわからない、とか、途中で席を抜けられない、とか、観客に極度の緊張をかけるじゃないですか(笑)。

イープラスは、毎年『世界まるごとクラシック』という、子どもを連れてきてもOKの鑑賞企画をやっています。指揮者の青島広志さんが独特の話術と誰でも知っている曲をやる。子どもが騒いでもOK。もう6、7年やっているんです。東京国際フォーラムホールAがいつも満員になるんです。もっとクラシックの垣根を低くして、もっと知っている曲をやって、マニアのためのクラシックだけじゃなくこういうクラシック鑑賞会をやればもっと広がるのになあ、と。子供にいい音楽を聴かせたいというファミリー欲求。かなり強いですよ。

イープラスにはクラシックファンも多いので、そういう方々にイープラスがカフェでこんな企画をやってるって、もっともっと知らせたいですし、一般の方にも広げていきたいですね。大人が夜楽しむ「(仮)ワインとクラシックの夕べ」的な企画もぜひやりたいです。

―― この店の広さなら、室内楽もふつうにできますしね。ヴァイオリン、ビオラ、チェロの編成でも。

橋本:

実はこのお店、音響もすごくこだわって作っているんですよ。どこにいても音が均等に聴こえる分散スピーカーを導入しています。お客さん同士が会話をしていても音がちゃんと聴こえるんです。

―― ちなみに今後、どんな方に出演してほしいと思っていらっしゃいますか?

橋本:

人柄がいい人!(笑)クラシックをもっとカジュアルにとらえて広めることに賛同してくれる人。その方々のパフォーマンスを観たら「クラシックは楽しい!」と観客に思わせてくれる人たちですね。演奏力はもちろんですが。

―― クラシック業界の方々の反応は?

橋本:

格式の高いジャンルですから、いろんな意見が出ると思いますよ。でも評価するのはお客様ですし、ここで聞くきっかけをつくってホールに足を運んでくれれば最高ですよね。
反田さんのサンデーブランチの時も、サントリーホールでやるデビューワンマンコンサートのチケットがかなり売れていましたから。終了後のアンケートで読んだのですが、カフェに入って偶然コンサートを聴いた人も結構いたようですので。

―― これからの「リビングルームカフェ」に必要なことはなんだと思いますか?

橋本:

企画力だなと。環境に頼りすぎず、こういう場があるんだから、ここでどういう企画を出せるのか、ここでしかできないことは何かと考えていくことですね。あと、リビングルームカフェのコンセプトでもあるアーティストが友達を自宅のリビングルームに招待する感覚。単に演じ手と聴き手という相対する関係ではなくて、もっとフレンドリーに演奏が終わったら自分達も客席に入って楽しんでもらう。そんなアーティストの所へお客さんが「おう、よかったよ」って話しかけたり、そういった雰囲気も重要じゃないかと思うんです。

―― カフェをPRしていくための企画で、今、考えていることは?

橋本:

1本目は今話していた「サンデー・ブランチ・クラシック」ですね。
定着させたいです。

2本目は「テーマをもったウィークリー企画。例えばロックをアンプラグドでやる週とか、ライブ・イマージュ的なインスト企画とかジャズ・ウィークがあってもいいと思います。その中にメジャーなアーティストも入れて定番化していきたいと考えています。

さらに3本目としては「一流アーティストのここでしか聴けないスペシャルコンサート企画」価格はアーティストとこの限定された空間の価値によりますが、完全なリミテッド企画です。
クラプトン、ビリージョエル、キャロル・キングを呼ぶのが夢です。

4番目は平日出演の我々が支援するリビングルームカフェ・レギュラーアーティストをメジャーにすることです。リビングルームカフェを創った本来的意味ですので。

―― 最後に、橋本さんからお客様たちへのメッセージを。

橋本:

ナマを体験する、ナマのすばらしさ、感動を体験してもらいたい。そういう空間が広がっていくことこそが日本の文化がもっと豊かになってゆくことだと思います。小さいことからかもしれませんが、従来にない新しいエンターテインメントの楽しみ方をイープラスは提案していきたいと考えています。

まだ、スタートしたばかりですが、「eplus LIVING ROOM CAFE & DINING」ぜひお立ち寄りください。

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